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 第17回 サイエンスカフェ岡山
山海氏画像
Prof.Sankai University of Tsukuba /
CYBERDYNE Inc.
ゲスト講師 山海 嘉之(YOSHIYUKI SANKAI) (筑波大学大学院システム情報工学研究科 教授  CYBERDYNE株式会社 代表取締役社長 | 茨城県) 「人に寄り添うロボットテクノロジー」  日時:1月9日(土)14:00〜16:30      (13:45より受付開始)  会場:ルネスホール(岡山市北区内山下)  対象:中学生以上の一般  定員:60名(先着順)  飲食費:1000円  終了  参加申込・問い合わせ先: 倉敷科学センター(086-454-0300) <テーマ概要> 幼いころ、アイザック・アシモフの人気SF作品 「われはロボット」を読み、人の役に立つ科学者に なりたいという想いを抱いたという岡山県出身の 山海先生。世界が注目するロボットとサイボーグ 両方の特徴を併せ持った『ロボットスーツ』開発の 原点になったと語っています。 筋肉を動かそうという微弱な電位信号を感じ取り、 あたかも身体の一部のように、その動きの手助けを してくれるロボットスーツ。 傷ついた身体のリハビリ、介護支援、災害現場の レスキュー活動など、人々に役立つ幅広い分野への 応用が期待されています。 ■会場情報 ルネスホール  場所  岡山市北区内山下1−6−20  TEL:086-225-3003  http://www.renaiss.or.jp/  ※会場には駐車場がありません。近隣の有料駐車場をご利用ください。
 開 催 報 告  文章 / 田畑(ボランティア運営スタッフ)

岡山時代での幼少時、コミックやASIMOVに導かれ、一途に科学者としての道を歩まれた個人史から始まりました。現在の厳しい教育環境の中でも日本は、"ロボット"に特別な「ともだち」的親しみを持って技術的には世界トップの位置にあるという自信で、未来へのまなざしを強く語られました。 前半は、HALとは何か、HALの仕組み、HALの実用化について。
ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)は、世界初のサイボーグ型ロボット。
人体に装着することによりリハビリを援助したり、ポリオや脊髄損傷、筋ジストロフィーなどの患者さんの歩行を可能にしたり、危険な場所での遠隔操作、巨大な端末も操作可能な夢多き活用が期待されているテクノロジー。昨年は、バリアフリー工事の許されない世界遺産への障害者のかたの登山も実現!
「筋肉を動かそうとする意志により運動神経から筋肉に伝わる微弱電流」をセンサで感知してHALのコンピューターが筋肉の動きと一体的に関節を動かす "随意制御"。さらにHALの"自動制御"によるインタラクティブなサポート。これが、研究室の中からだけの発信ではなく病院や施設の現場と一体になっての開発が進められ、昨秋から、レンタル事業の開始に入った会社の状況の説明がありました。
ブレインマシーン・インターフェイスや足裏センサなどの将来的な事柄も含めたお話の後、ティーブレイク。ガトーショコラと珈琲の時間も、先生とロボットを囲んで活発な交歓タイムとなりました。
後半はディスカッションと体験・体感の時間。
基本的な用語に関する質問からバッテリーや実用的な質問、未来への希望的観測までの質問に、お答えのほうもかなり深い部分にまで及びました。 人間型ロボットについて、クローン人間との違いについて、現在公開中の映画[アバター]について、などなど。人材育成の問題については、何か一つでも突出した部分を持つ人を上手く育てていける教育システムの必要性。(若者には、そのような研究者を目指してほしいと。) 特に、どうしても論文集積での業績主義に陥りやすい大学、一般企業に比べ社会に直接寄与する方向に行きにくい大学、という大学の在り方についても言及されました。
医学部が付属病院を持つのと同じように、工学系の研究室も社会還元できる施設を持って現場の声を反映させることが、本来の研究の進展のためにも有益であること。そして最終的に家庭での使用まで到達できるかどうか? 研究分野に加え、経済・行政・倫理なども含めた多くの分野の人の知恵を集めてシステム化していく過程にあることを明るい未来像のひとつとしてみせていただきました。
最後に、数名の参加者がロボットスーツを装着して未知の世界を実体験、改めてテクノロジーの妙技に魅せられました。
人間の不得意なところを補ってくれるロボットとして認められたHALが、人の力も増しながら人に合わせて、身体機能の衰えを支援してくれるテクノロジーとして着実に育って生きつつあることを熱く語られ、時間いっぱいぎりぎりまで対話の尽きない貴重な時間となりました。

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