皆既月食画像中継を見る前に、月食の基本的な知識も身につけておけば、中継をもっと興味深くご覧になることができるでしょう。ここでは簡単な月食全般の解説や、今回の皆既月食の見え方(見どころ)などをご紹介していきます。
月も自分で光り輝いているわけでなく、太陽の光に照らされて明るく見えているため、地球の影の部分に入り込むとその明るさを失います。これが月食です。この際には太陽−地球−月が一直線に並ぶため、その位置関係から月食は必ず満月状態の時に起こります。 |
それならば、満月のたびに月食が起こってもよさそうですが、実際にはそのようなことはありません。これは、月の軌道が微妙に傾いているために、普段は地球の影の上側を通過したり、下側を通過したりすることが多いためです。月が地球の影の中に入るのはなかなかまれなことなのです。 |
また、地球の影にも二種類あり、「太陽の光があたらない影の濃い部分」と「太陽の一部の光しかあたらない影の薄い部分」があり、前者を本影部分、後者を半影部分と呼びます。通常、本影に月が入り込むときに我々は「月が欠けている」と認識できますが、半影の部分に入り込んだときには、月はわずかに暗くなる程度です。目で見た限りでは、注意してみないと気づかないぐらいのものですが、写真に撮影すると月の片側がわずかに暗くなっているのが分かりやすくなります。
このため、本影部分に全体が入り込んでしまうと「皆既月食」、本影部分をかすめると「部分月食」、半影部分の中だけを通過するときには「半影月食」という言い方をするのです。 |
それと、皆既月食の際には月は完全にその明るさを失ってしまうわけではなく、赤銅色と呼ばれる鈍い赤色の色彩になります。この時、月の輝きがほとんど失われてしまった分、月のまわりの星も見やすくなり、普段の月の様子とは全く違った非常に美しい光景が楽しめます。
これは、地球の大気中を通過してきた太陽光線がわずかに屈折し、夕焼けと同じような原理で赤い色で月の表面を照らすためです。毎回の皆既月食の明るさ(赤さ)は食の規模はもちろん、大気の透明度にも大きな影響を受けるといわれています。一般的に火山の噴火などで大気圏の上層の透明度が悪くなってくると皆既月食は赤黒く、暗いものになる傾向があります。 |
2010年までに日本で見ることができる月食 |
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7月16日の夜には2年10ヶ月ぶりに全国で皆既月食を見ることができます。21時ごろから欠け始める今回の月食は,ご飯食べて,お風呂に入って,観察準備もできてといった,観察しやすい時間帯に起こる好条件の月食といえるでしょう。ちなみに,今回を見逃すと次回は半年後の2001年1月10日明け方となります。
今回の月食の特徴は,月が地球の影のほぼ中心付近を通過するため,皆既月食の時間(月に光が当たっていない時間)が1時間47分ときわめて長いことです。あまり長すぎて飽きそうになるかもしれませんが,幻想的な赤い月の姿を,思いっきり満喫してください。
月食の時間経過は全国どこで見ても変わりません。
食の始まりは 20時57分、
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なお、月食は望遠鏡のような機材を使わなくてもそれなりに楽しめる天文現象ですが、双眼鏡や望遠鏡を使って観察すると、刻々と欠けていく姿を詳しく観察することができます。月は欠けはじめから約一時間かけて皆既食の状態になりますが、望遠鏡で拡大するとずいぶん早く影の部分が広がっていく様子に驚くことでしょう。
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