ペルセウス座流星群観測ガイド(はじめに)

ペルセウス座流星群  毎年、夏休みのお盆のころになると、われわれの目を楽しませてくれるペルセウス座流星群。
 明るく派手な流星が多いことで知られるこの流星群は、望遠鏡のような特別な観測機材を必要としないため、初心者でも気軽に取り組め、ストレートに感動を味わえる、貴重な天文ショーの一つとなっています。
 家族や恋人、気の知れた仲間と一緒のスターウォッチング、夏休みの宿題、キャンプでの自然観察など、取り組み方は人それぞれですが、流星群の観測方法や特徴をしっかり押さえておくことは、より楽しく確実に流星観測を楽しむためにも重要なことなのです。

ペルセウス座流星群の特徴

ペルセウス座流星群データ(2023)
流星群名:ペルセウス座流星群
出現期間:7月20日~8月20日
極大時刻:8月13日午後5時(日本時間)
予測出現数:1時間に20個(初心者)
流星の特徴:高速で有痕率が高い
極大太陽黄経:140.0°
輻射点位置:赤経48°赤緯+58°
極大日の月齢:26(条件良)
母天体:スイフト-タットル周期彗星
       109P/Swift-Tuttle
※誠文堂新光社「天文年鑑2023」
 より一部引用
 高速で明るい流星が多いペルセウス座流星群は、数ある流星群の中でも、もっとも見応えのある流星群として知られています。
 母天体は1862年にアメリカのスイフト氏とタットル氏により発見されたスイフト・タットル彗星という周期彗星で、だいたい135年ごとに太陽の近くに戻ってきます。前回の回帰は1992年12月でした。
 流星と一口で言っても実際に観測してみると、その一つ一つはたいへん個性的です。末端で爆発して消滅するもの、せんこう花火のように枝分かれや分裂するもの、色合いの変化が著しいもの、そのバリエーションの豊かさにはいつも驚かされます。
流星痕  特にペルセウス座流星群は、明るい流星が消滅した後に「痕(こん)」と呼ばれる雲か煙のようなあとが残るのも魅力となっています。正体はまだはっきり解明されていませんが、100kmあたりの高空で、流星が燃え尽きた後に残るプラズマ化したガスが、周囲の大気成分と化学反応を起こして発光するものだと考えられています。痕には一瞬で消えてしまうものや、永続痕と呼ばれる数十秒以上見え続けるものもあります。永続痕はかなり大規模な流星のあとにしか見ることができず、非常にまれな現象です。痕を残しやすい流星群としては、ペルセウス座流星群のほか、11月のしし座流星群などがあります。(画像:2001年しし座流星群で観測された永続痕の連続画像

観測時期

 2023年のペルセウス座流星群の活動のピークは8月13日の深夜から明け方と予想されています。もちろん、このタイミングで観測するのがベストなのですが、前後2日ぐらいは出現数こそ減りますが流星観測は十分できます。活動のピーク当夜に天候が悪く観測ができなかったとしても、また翌日のチャンスに賭けることをおすすめします。
 また、流星は夜中から明け方にかけてたくさん見えるという特徴があります。「夕ご飯を食べて、お風呂上がって、流星観測したけどほとんど見えなかった」という問い合わせを受けたことがありますが、このケースでは、観測時間に問題があったということになります。
 「何時に?」という特定の時間は、その年ごとの出現傾向に差があり予測しにくいのですが、一般的には夜中過ぎ午前2時から4時ごろがおすすめの時間帯とされています。一晩の出現傾向をしっかり観測したいという方は、午後11時から明け方星が見えなくなるまで、できるだけ長い時間夜空を監視し続けてください。
 流星観測は眠気との戦い、根性の持久戦ですが、とにかくがんばってください。あなたなら早起きして見ますか?それとも、夜更かしして見ますか?

観測場所

広い場所を選ぼう  流星を見る場所はどこでもよいというわけではありません。星空が見える場所であれば、どこでも可能という言い方もできますが、たくさんの流星を確実に見たいと思うならば、星がよく見える条件がよい場所を選ぶことが必要となります。少数でいいと割り切って自宅のそばで気軽に観測するのもよし、天の川が見えるような星空の元に移動して、できるだけ多くの流星に挑戦するのもよし、みなさん一人一人で観測スタイルもきっと変わってくることでしょう。
 しかし、いかなる場所での流星観測においても、空ができるだけ開けている場所を選ぶのが基本です。山や建物、樹木のような障害物が少なく、地面に寝転がって、広い範囲の空を気持ちよく見渡せればOKです。
 また女性が一緒の場合は、お手洗いが使用できる場所を探しておくこともお忘れなく。

準備しておくとよいもの

 流星群の観察に望遠鏡などの機材は必要ありませんが、懐中電灯、地面に寝転がるシートやマットなどは必需品です。夜食やゴミ袋のほか、夏の季節の観測には虫よけも用意する方がいいでしょう。また、夏といっても明け方は冷え込むことがありますので、長袖の服も用意しておきましょう。この他、星座を探しやすくするための星座早見盤もあると便利です。

観測の方法

寝ころんで観測  寝ころぶなど、楽な姿勢で夜空をながめましょう。キャンプや海水浴で使用する簡易ベッド(サマーベッド)を用いると、夜露で身体を冷やすことなく観測できるので快適です。
 また流星も自然現象の一つなので、予想通りの数が出現しないこともあります。5分ほどまったく流星が見えないと思ったら、次の5分間には10個ほど流れたり、ばらつきもあります。また観測者の熟練度や空の条件などでも流星数はかなり変わりますので、5分、10分であきらめず、1時間ぐらいは夜空に取り組んでみようというぐらいの、おおらかな気持ちでのぞみましょう。
2001年しし座流星群  星座が探せる人はペルセウス座の位置を確認しておきます。ペルセウス座流星群はペルセウス座の方向を中心として、そこから四方八方に流星が飛び出してくるような見え方になります。つまり流星の経路を逆にたどってペルセウス座があれば、ペルセウス座流星群関連の流星といえます。(画像:しし座流星群の大出現-2001年)ときおり、ペルセウス座流星群とは無関係の流星が流れていることにも気づくでしょう。
 流星をながめるだけのところから少し背伸びして、観測らしいことに初心者が挑戦したいと思ったら、ある時間内(例えば午前1時から2時までの1時間)に見えた流れ星の数を数えてみるというのはいかがでしょうか?多くの人と一緒に観察するなら、誰がいちばん多く流れ星を見たか楽しく競争することもできますね。一晩頑張って得られた結果は最寄りの流星観測(研究)者や天文台、科学館等の天文施設の担当者に報告してアドバイスをもらってみましょう。

火球(かきゅう)を目撃したら

大火球  流星の中には、まれに周りがぱぁっと明るくなるぐらい大規模なものが目撃されることがあります。こういったものは特別に火球(かきゅう)と呼ばれることがあります。火球に明確な定義というものはありませんが、マイナス3等級よりも明るい流星を火球として扱うことが多いようです。
 火球の出現は流星観測の「華(はな)」ともいわれます。その美しさは多くの観測者をとりこにしてしまうでしょう。火球は天然の花火のように、色彩を変えながらきらめき、分裂、爆発などを伴いながら華々しく輝きます。中には音が聞こえたり、昼間のような明るさで輝くものもあるそうです。
 火球は様々な地域で同時に観測されることが多いので、これらの目撃情報を解析すると火球がどのように地球大気に突入し、日本上空のどのあたりを飛行したのかということが分かります。学術的にも重要なものですので、火球を見たら以下の要領でしっかり目撃情報を記録して専門家に報告しましょう。
火球報告例

流星のほかに夜空に見えるもの(人工衛星)

人工衛星(シャトルコロンビア)  じっくりと夜空を長い時間観測していると、流星のほかにもいろいろなものが見えてきます。夜空をゆっくり動いていく光の多くは夜間飛行の飛行機で、よく見ると分かる翼の緑や赤のランプが点灯しているので区別できます。しかし、飛行機とは思えない星のような光点も見えることがあります。これは、宇宙空間を行く人工衛星です。(画像:夜空を横切る人工衛星-スペースシャトル・コロンビア号)
 人工衛星は主に夕方や明け方の時刻に見えることが多く、中には地球の影に入って見えなくなるものや、逆に影の中から現れてくるもの。衛星自体の回転のため、周期的に明るさを変えるものなど、その振る舞いもさまざまで興味深いものがあります。
イリジウム衛星  しかし、人工衛星の中でも異色の振る舞いを見せるのが「イリジウム衛星」です。搭載されている鏡のようなアンテナ板に太陽光線が反射すると、10~20秒ほど明るく輝きます(イリジウムフレア)。何もなかったところに突然星が輝きだし、すぐにじんわり消滅していくという不思議な光景です。衛星からの反射光がピンポイントで観測地報告に向いたときには、その明るさはマイナス8等級に達し、夜空の一点に突然サーチライトが現れたような錯覚さえも覚えるほどです。(画像:イリジウム衛星のフレア)
 時に「UFOを見た!」という誤解を生むこともある人工衛星ですが、じっくり夜空をながめる流星観測の際には、意外とたくさん見つけることができます。みなさんの流星観測の楽しみの一つに加えていただくとよいでしょう。また、観測しやすい人工衛星は、インターネットで予報が公開されています。あらかじめ、観測できるか下調べをしておくと現地での楽しみが膨らみます。
 
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