流星群を写真に撮りたい(デジタルカメラ編)

 流星の撮影は、夜景の写真を撮るような初歩的な撮影方法で挑戦できます。ここでは、デジタル一眼レフミラーレス一眼の利用を前提に解説をさせていただきます。フィルムカメラでの撮影はこちらをご覧ください。

撮影機材  マニュアル操作が可能で、数秒間の低速シャッターかB(バルブ)と呼ばれるシャッター開放(開きっぱなし)が使えるデジタルカメラ本体、35~50mm程度のレンズ(口径比[F値]が3.5以下であることが好ましい)、シャッター時の手ぶれ防止のためのリモートコントローラ(電子レリーズ)、強度がある(カメラを乗せても揺れにくい)カメラ三脚などが必要です。フラッシュ付きのカメラであれば、フラッシュ発光機能もオフにしなければなりません。
 なお、ここでは撮影の基本要素について解説しますが、カメラ機能の設定方法は機種によってまちまちです。カメラ付属の取扱説明書を参考にしてください。

四連カメラ台  流星写真は偶然のたまものです。流星はいつ、どこに現れるか予測できませんし、ほんの一瞬しか輝かないので、流星が現れた瞬間にカメラを向けてシャッターを切るということは不可能です。
 夜空の一角にカメラを向け、シャッターを数秒~数十秒間開きっぱなしにしながら、偶然、その撮影範囲に明るい流星が出現するのをひたすら待ちます。当然、流星が写った一握りの画像の裏には空振りとなった多くの画像が残されます。無駄が多い撮影ですが、これが唯一の流星撮影法なのです。
 流星観測者はより成功率を上げるため、画像のようにカメラの数を増やし、できるだけ広い範囲を一度に撮影できるよう工夫しています。

レンズのピントは無限遠  レンズのピントは無限遠(∞)に合わせます。しかし、オートフォーカス機能をオフ(レンズをマニュアルモードにする)にしておかないと、シャッターを切るときカメラが勝手にピントの位置を変えてしまいます。カメラによってはオートフィーカス機能をオフにできない機種もあるので注意が必要です。

オートフォーカスを解除する  オートフォーカス(自動焦点合わせ機能)をオフ(解除)にする方法は、カメラによってまちまちです。レンズやカメラボディーに切り替えボタンがある機種や、メニューから手動フォーカスを選択しなければならない機種もあります。カメラに詳しい人に聞いたり、取扱説明書をよく読んで調べてみてください。

感度や絞りを設定する  次に感度と絞りを合わせます。感度は「ISO」と表記されるもので数字が大きいほど暗いものが明るく写りますが、感度を上げすぎるとノイズが多くなりザラザラとしたきたない質感の画像になります。ISO 800~1600 あたりに合わせましょう。絞りは「F」と表記されるもので、数字が小さいほど短い露出(シャッター速度)で暗いものを明るく写すことができます。F2.8~3.5あたりに合わせましょう。一部のズームレンズなどには、F4以下に設定できない仕様のものもあり、流星撮影には向かないため注意が必要です。

ここまで、初心者の流星撮影にお勧めのカメラの仕様と設定のおさらいです。
 
1)レンズは35~50mm程度
2)しかっりしたカメラ三脚やリモートコントローラも用意する
3)フラッシュ付きカメラは、発光機能をオフにする
4)オートフォーカスを解除する(手動フォーカスにする)
5)レンズのピントは無限遠(∞)に固定
6)撮影モードはマニュアル、感度(ISO800~1600)と絞り(F2.8~3.5)を設定
 
さあ、いよいよ星空の下での撮影に挑戦です。
カメラ、リモートコマンダー(電子レリーズ)、三脚を組み上げ、撮影したい夜空の方向にカメラを向けてみてください。

露出時間について  露出とはカメラのシャッターを開いて撮像素子に光を当てることです。この露出時間を変えることによって適正な光の量で画像を記録しなければなりません。つまり、露出時間を長くすることで暗い対象を明るくとらえたり、露出時間を短くすることでまぶしい対象をちょうどよい明るさでとらえることが可能となるのです。
 流星写真では、数秒から数十秒の露出時間が必要です。適正な露出時間は撮影場所の夜空の明るさによって大きく異なるため、実際に試写をしながら探っていくしかありません。
 右の写真は露出時間を変えた場合の星の写り方の違いを表しています。露出時間を長くしすぎると夜空の背景が白く飛んでしまい星の存在が分からなくなってしまいます。試写を繰り返しながら、適正な背景の明るさで、かつ星の存在感が一番いい状態になる露出時間を探ってください。
 露出時間は夜空が暗い星がよく見える場所ほど長くすることができます。たいていのカメラは露出時間が15~30秒までなら設定可能ですが、それ以上の長い露出が必要な場合はシャッター速度を「B(バルブ)」に合わせます。シャッターを押している間、ずっとシャッターを開きっぱなしにできる機能です。

撮影  さあ、ここまで準備ができたらいよいよ本番です。明るい流星がカメラの前を横切ることを願ってシャッターを切り続けましょう。
 しかし、流星写真の場合、数秒ごとにシャッターを切るという作業が長時間に及ぶため、撮影者にとっては大きな負担となります。それなりの出費とはなりますが、本格的に流星写真に取り組みたい方は、撮影者に代わって自動でシャッターを切り続けてくれる、プログラム機能付きのリモートコマンダーの利用をお勧めします。

予備の記録メモリやバッテリーも必要  流星写真を成功させるためには、とにかく撮って撮って撮りまくって、明るい流星がカメラの前を横切る偶然の確率を高めるほかありません。デジタルカメラを使った流星撮影では、一晩で数百枚、時には一千枚を越える画像を撮影することになります。記録メモリは大容量のものを使うようにしてください。また、予備の記録メモリやカメラのバッテリーも用意しておくとよいでしょう。

よくある質問や失敗例

1)星がぜんぜん写っていない(画面が真っ黒)
  露出時間が短いか、感度設定が低すぎたのかもしれません
2)画像が真っ白
  露出時間が長すぎか、感度設定が高すぎたのかもしれません
  撮影地が空が明るすぎるため、郊外に移動する必要があるかもしれません
3)星が点になっていない
  ピントが無限遠(∞)に合っていなかったのかもしれません
4)星が線になって写っている
  地球の自転のため、星はゆっくり動きます。失敗ではありません
5)流星がカメラの前を横切ったのに写っていない
  暗い流星は写りません。1等星以上の明るさの流星に期待を掛けましょう
6)星が震動して(ブレて)写っている
  三脚の強度が不十分かリモート操作でシャッターを切らずに、
  手でシャッターボタンを押した場合にこうなることがあります
7)レンズに夜露が付いて写りが悪くなってしまう
  付いてしまった夜露はドライヤーやヒーターの温風で蒸発させます
  桐灰カイロをレンズに縛り付けてほんのり温めると夜露が付きにくくなります

コンパクトデジカメで撮影したい方へ

コンパクトデジタルカメラ  デジタル一眼レフカメラと比べ、コンパクトデジタルカメラではレンズや撮像素子の能力が低いため流星は写りにくいと言われ、成功する確率も低いようです。 しかし、上記で解説したような手動フォーカス調整機能の有無や感度や絞りの条件を満たしている機種であれば、流星撮影が不可能ともいえません。ズーム機能は使わず、 最高感度、最も明るい(小さい)絞り数値に設定して、まずは星空を相手に試写をしてみてください。十分星が写ってくれていれば見込みはあります。
 特に明るい流星のみが対象となりますが、挑戦する意義はあると思います。ぜひ、がんばってみてください。

さいごに

 流星写真は偶然のたまものと冒頭でご紹介させていただきました。どんなに労力と時間をつぎ込んでも報われないことが多いかもしれませんが、それだけにうまく撮影できたときの感動はひとしおです。みなさんお気に入りの一枚を得られるまで、あきらめずに頑張ってください。(画像:しし座流星群の大出現-2001年)

流星写真